つい相手を試してしまう心理とは?恋愛でやりがちな自己防衛行動を恋愛心理学で解説
気づくと、恋人や気になる相手を「試すようなこと」をしてしまう。
わざと返信を遅らせたり、冷たい態度をとって反応を見てしまったり。
そんな自分にあとから落ち込んで、「どうしてこんなことをしてしまうんだろう」と苦しくなることはありませんか。
頭ではもっと素直に、もっと大人な付き合い方をしたいと思っている。
それなのに、不安や怖さが強くなると、心が勝手に「自己防衛モード」に入ってしまうことがあります。
この記事では、その「つい相手を試してしまう」行動を、責めるのではなく、心が身につけてきた自己防衛として丁寧に見直していきます。
まずは自分の行動パターンを知ること。
そして、「試す」以外にどんな選び方があり得るのかを、一緒に探っていきましょう。
この記事で分かること
- 恋愛でやりがちな「相手を試してしまう行動」にはどんなパターンがあるのか
- 無意識の自己防衛として「試し行動」が生まれる心理メカニズム
- 愛着スタイルや自己肯定感、過去の恋愛経験と「試すクセ」の関係
- 試す代わりにできる、本音の伝え方と距離のとり方のヒント
- 自己防衛とうまく付き合いながら「試す恋愛」から「対話する恋愛」にシフトしていく考え方
「つい相手を試してしまう」行動にはどんなものがある?

嫌われたくないのに、つい相手の気持ちを試すようなことをしてしまって、あとから自己嫌悪になります…。
「なんであんな言い方しちゃったんだろう」と思い返して、さらに落ち込むこともありますよね。
恋愛の中で「相手を試す行動」は、はっきりとした名前がついているわけではありません。
ただ、よくよく振り返ってみると、いくつかのパターンに分けて考えることができます。
ここではまず、「どんな行動が“試している”と言えるのか」を具体的な場面で見ていきます。
自分を責める材料というより、「あ、これやってしまいがちかも」と確認するチェックリストのようなつもりで読んでみてください。

既読スルー・返信をわざと遅らせるなどのコミュニケーション上の「試し行動」
メッセージのやりとりの中で、もっとも分かりやすい「試し行動」は、あえて返信ペースをいじることです。
本当はすぐ返信できるのに、あえて時間を空けて返してみる。
「このくらい遅く返しても、向こうは変わらず連絡してくれるかな」と、相手の反応を見ようとする動きです。
たとえば、いつもは自分からすぐ返しているのに、ある日だけわざと既読のまま放置してみることがあります。
それは「追いかけてほしい気持ち」や「どれくらい大事にされているかを知りたい気持ち」が、遠回りな形で出ているとも言えます。
しかし、相手からすると「急に冷たくなった」「怒っているのかな」と、戸惑いにつながりやすいでしょう。
また、わざとそっけない短文で返してみることもあります。
「これで、相手が心配してくれるかどうかを見たい」という心理が働いている場合もあります。
コミュニケーションの量や温度を変えることで、相手の愛情の深さを確かめようとする行動は、試し行動の典型的なパターンと言えます。
デートのドタキャン風・不機嫌アピールなど、態度で気持ちを測ろうとするパターン
メッセージだけでなく、実際の態度で相手を試してしまうこともあります。
たとえば、デートの予定について「どうせ来ないよね」と冗談めかして言ってみることがあります。
本心では「来てほしい気持ち」が強いのに、先に自分の側から軽く否定してしまう形です。
また、理由をはっきり言わずに不機嫌な態度を取ってしまうこともあります。
そっけない返事や、表情の変化で「私の変化に気づいてくれる?」と問いかけているような状態です。
相手がどこまで気にかけてくれるか。
どれだけ歩み寄ってくれるか。
それを、言葉ではなく態度で測ろうとしているとも言えるでしょう。
このパターンは、自分から「寂しい」「不安」と言葉にするのが怖いときに出やすくなります。
言わなくても察してもらえたら安心できますし、「察してくれなかった」ときは「ほらね、やっぱり私なんて」と落ち込んでしまうこともあります。
その意味で、態度で試す行動は、自分の傷つきやすさと深く結びついていると言えるかもしれません。
SNS・元恋人・異性の友人を絡めた「ヤキモチ試し」
最近では、SNSや元恋人、異性の友人を巻き込んだ「ヤキモチ試し」もよく見られます。
たとえば、他の異性と一緒に写っている写真をストーリーズに上げて、恋人や気になる相手の反応をチェックするケースです。
直接「ヤキモチ妬いてほしい」とは言えないので、投稿やアイコンの変化などを使って、さりげなく刺激しようとしてしまうことがあります。
また、意味深な文章や、少し寂しそうなニュアンスの投稿をしてみることもあります。
「大切にされていない気がする」「なんだかむなしい」といった気持ちを、そのまま相手に伝える代わりに、SNS上で匂わせてしまうパターンです。
そこで相手がどんなリアクションをするのか。
コメントやいいねの有無、メッセージの内容を見て、「どれくらい自分を気にしてくれているか」を測ろうとしている状態と言えます。
さらに、元恋人や異性の友人の話題をあえて出して、相手の表情や言葉を観察することもあります。
「この人のことどう思う?」とさりげなく聞いて、そこにこもった反応から、自分への気持ちを読み取ろうとする形です。
こうした「ヤキモチ試し」は、相手の愛情を確認したい気持ちと、自分の価値を確かめたい気持ちが混ざっている場合が多いでしょう。
研究員メモ

ここでは「試す自分はダメ」と裁くのではなく、まずはどんな行動が「相手を試している」と言えそうかを整理しました。
自分に当てはまるものがあったとしても、それは多くの場合、「不安」と「大切にされたい願い」が形を変えたものだと考えられます。
次の章では、その背景にある自己防衛のメカニズムを、少しずつひもといていきます。
なぜ相手を試してしまうのか?無意識の自己防衛メカニズム
研究員メモ

試す行動の多くは、「相手を困らせたいから」ではありません。
むしろ、自分がこれ以上傷つかないように先回りする、無意識の自己防衛と考えられます。
相手を試してしまうとき。
表面では「どれくらい私のことが好きか知りたい」と感じているかもしれません。
その一方で、心の奥では「もし本気じゃなかったらどうしよう」「裏切られたら耐えられない」という不安が動いていることも多いです。
本音をストレートに伝えるのは、とても勇気がいることです。
だからこそ、遠回りなやり方で相手の気持ちを確認しようとしてしまいます。
ここでは、その裏側で働いている自己防衛のメカニズムを見ていきます。
「先に傷ついておけば楽」という逆転した安心感
「どうせいつかフラれるなら、今のうちに覚悟しておいたほうが楽かもしれない。」
そんな逆転した安心感が、心のどこかで働いていることがあります。
たとえば、関係がうまくいき始めたときに、あえて距離を取ってしまう人もいます。
メッセージの返信を減らしたり、会う回数を急に減らしてみたりすることがあります。
それは、「本気になりすぎると、ダメになったときに耐えられない」という怖さからの自己防衛かもしれません。
先に自分から距離を取っておけば、「相手に捨てられた」という感覚を弱められるように感じることがあります。
「私のほうから引いたから」と思えたほうが、ショックが少ないように感じるのです。
また、わざと冷たくして相手の反応を見るのも同じです。
もしそのときに相手が離れていったら、「ほら、やっぱりそういう人だった」と自分に言い聞かせられます。
もちろん実際には、とても苦しいパターンですが、心は「突然の痛み」より「予想していた痛み」のほうがまだましだと判断してしまうことがあります。
本音を言うのが怖くて「察してほしい」に頼ってしまう心の動き
本当は、「不安だ」「寂しい」と素直に言えたら一番シンプルです。
ただ、そう言ってもし拒絶されたら、とても深く傷ついてしまうかもしれません。
その怖さが強いとき、人は「言葉では言わず、行動で気づいてほしい」と願いやすくなります。
たとえば、わざと返信を遅らせてみたり、会話の中で少し刺さる冗談を言ってしまったりすることがあります。
そこには、「本当は不安だから気づいてほしい」「本当はもっと大事にしてほしい」という気持ちが隠れている場合があります。
しかし、「察してほしい」に頼りすぎると、相手には意図が伝わらないことも多いです。
相手は「機嫌が悪いのかな」「忙しいのかな」と別の理由で受け取ってしまうかもしれません。
その結果、「分かってもらえなかった」という孤独感が強まり、さらに試したくなるという悪循環が起きやすくなります。

わざと試してるというより、「気づいたらやっちゃってた」って感覚のほうが近い人も多いよね!
あとから振り返って、「あれって試してたのかも…」って気づくパターンもありそう!
過去の痛みから学んだ「これ以上傷つかないためのルール」
過去に強く傷ついた経験があると、それを二度と繰り返さないように、心は独自のルールを作ります。
「簡単に信じたらまた裏切られるかもしれない。」
「疑っておいたほうが安全かもしれない。」
そうした学びが、「試し行動」として表に出てくることがあります。
たとえば、以前の恋人に浮気をされた人は、「同じような状況」をとても敏感に察知しやすくなります。
残業が続く、スマホを見る時間が増える、SNSの動きが変わる。
それだけで、過去の記憶がよみがえり、「本当はどうなの?」と強く確認したくなるかもしれません。
その不安をうまく言葉にできないとき、「あえてヤキモチを妬かせてみる」「連絡を減らして様子を見る」といった形で、防衛ルールが発動します。
「ちゃんと追いかけてきてくれたら安心できる」という期待も、その裏側にはあります。
こうした行動は、決して「性格がゆがんでいるから」だけではありません。
それよりも、過去の痛みから身を守ろうとして、心が覚えたやり方だと言えるでしょう。
そのやり方が今の自分にとってしんどくなってきたときこそ、「別の守り方」を考え始めるタイミングなのかもしれません。
背景にある愛着スタイル・自己肯定感・過去の経験

頭では「もっと素直になりたい」と思っても、心のどこかで相手を疑ってしまう自分がいます。
「信じたい」「でも怖い」が同時にあって、ブレーキとアクセルを一緒に踏んでいる感じになるときがあります。
「つい相手を試してしまう」行動の背景には、今その場で起きている出来事だけではなく、心がこれまでに学んできたパターンが関わっていることが多いです。
そのパターンをつくる要素として、よく取り上げられるのが愛着スタイルや自己肯定感、そして過去の恋愛経験です。
もちろん、「このタイプだから絶対こうなる」と決まっているわけではありません。
ただ、自分の傾向を知ることで、「あ、こういう理由があって私は試してしまいやすいのかもしれない」と、少しだけ自分に優しくなれることがあります。
研究員メモ

ここでは、
愛着スタイル・自己肯定感・過去の恋愛体験
という三つの視点から、「試す行動」が生まれやすい背景を整理していきます。
不安型・回避型などの愛着スタイルと「試す行動」のつながり
愛着スタイルとは、「人との距離をどう取りやすいか」という心のクセをまとめた考え方です。
代表的には、安定型・不安型・回避型などに分けて説明されることが多いです。
不安型の傾向が強い場合は、「見捨てられること」への怖さが強くなりやすいと言われます。
相手が少し冷たく感じられただけで、「嫌われたのかもしれない」と感じやすくなります。
その不安を確かめるために、次のような「試し行動」が出やすくなります。
- わざと返信を遅らせて、どれだけ心配してくれるかを見る
- 少し冷たい言い方をして、相手が離れずに受け止めてくれるか確認する
- 「どうせ私なんて」と言って、否定してくれるかどうかを見る
どれも、「本当は離れてほしくない」「ちゃんと好きでいてほしい」という願いの裏返しと考えられます。
一方、回避型の傾向が強い場合は、「近づきすぎて傷つくこと」が怖くなりやすいとされます。
距離が縮まりそうになると、息苦しさを感じたり、心の中でブレーキがかかったりします。
そのため、次のような形で相手を試すことがあります。
- わざと予定を後回しにして、相手の様子を見ながら距離を保つ
- 本当はうれしいのに、素直に喜ばず「そんな大げさな」と軽く流してしまう
- 深い話になりそうになると話題を変えて、どこまで踏み込んでくるかを試す
ここでも、「本当は近づきたいけれど、近づきすぎが怖い」というジレンマが背景にあります。
安定型の人でも、状況によっては試し行動が出ることはあります。
ただ、不安型や回避型の傾向が強いと、「試す」という形で自分を守ろうとする場面が少し増えやすい、とイメージしておくとよいかもしれません。
自己肯定感が揺らいでいると「愛情の証拠集め」が増えやすい
自分に対して「これでいい」と思える感覚が弱くなっているとき、恋愛の中で相手の反応に過敏になりやすくなります。
自己肯定感が低い状態では、「この人もいずれ自分から離れていくのではないか」という不安が強まりやすいからです。
そうなると、相手の言葉や行動の一つ一つを、「愛情の証拠」かどうかという基準で見てしまうことがあります。
- 今日は絵文字が少ない=気持ちが冷めてきているのかもしれない
- 返信が遅い=優先順位が低くなっている証拠かもしれない
- 会う約束の提案をしてくれない=本気ではないのかもしれない
このように、“かもしれない”がどんどん不安な方向に膨らんでいくと、「もっと証拠を集めなくては」と感じやすくなります。
結果として、試し行動が増えることがあります。
たとえば、「しばらく連絡しなかったら、どのくらい向こうから連絡してくるか」を見ようとする。
「少し冷たくしてみて、それでも優しく接してくれるかどうか」を確かめようとする。
こうした行動も、「自分は愛されるに値するのか」を確認したい気持ちから生まれている場合があります。
自己肯定感が揺らいでいるときほど、相手のちょっとした変化を、自分の価値の問題として受け取ってしまいやすくなります。
それが、試す行動を頻繁にしてしまう土台になることもあるのです。
裏切り・トラウマ体験が“疑いグセ”として残ることもある
過去の恋愛で、強い痛みを経験したことがある人もいます。
たとえば、浮気をされた。
約束を何度も破られた。
「大丈夫だよ」と言われていたのに、突然別れを告げられた。
こうした経験は、その後の恋愛にも影響を残すことがあります。
一度大きく裏切られると、「もう二度と同じ思いはしたくない」という気持ちが強くなります。
その結果、「信じ切るより、少し疑っておいたほうが安全」というルールを、心が無意識のうちにつくってしまうことがあります。
そのルールが働いていると、次のような行動が出やすくなります。
- 相手のスマホの扱い方やSNSの動きを、必要以上にチェックしたくなる
- 少しでも怪しく感じると、相手の言葉より疑いのほうを優先してしまう
- 「また裏切られるかもしれない」と感じて、先に試し行動で確かめたくなる
このとき、本人は「疑っているつもりはない」と感じている場合もあります。
ただ、「あのときのような痛みを繰り返さないために」という深いところの不安が、今の行動を動かしていることがあります。
過去の経験は、簡単には消えません。
しかし、「今の自分の疑いグセには、過去のこうした経験が関わっているのかもしれない」と気づけるだけでも、少し見え方が変わることがあります。
自分を責めるだけではなく、「それだけつらい経験をしてきた自分なんだ」と、いたわりの視点を持つことも大切なステップです。
相手を試してしまったあとの悪循環と、二人の関係への影響

試したあとって、相手の反応にモヤモヤするし、自分も自己嫌悪になるしで、けっこうしんどいループになりがちなんだよね。
相手を試すような行動は、その場では「相手の気持ちを確かめたい」という目的があります。
ただ、多くの場合、試したあとのほうがしんどくなることが多いです。
相手が思ったような反応をしてくれなかったり。
少し距離を置かれてしまったり。
それを見て「やっぱり愛されていないのかも」と感じて、不安がさらに大きくなる。
一方で、試された側も「自分は信頼されていないのかもしれない」と傷つきます。
その疲れが積み重なると、関係全体の雰囲気も重くなっていきます。
ここでは、どんな悪循環が起きやすいのかと、二人の関係にどんな影響が出やすいのかを整理してみます。

「試す→相手が疲れる→不安が増す」という負のスパイラル
相手を試す行動は、短期的には「安心したい」ためのものです。
しかし、長期的にはその安心感を自分で削ってしまうことがあります。
たとえば、次のような流れが起きやすくなります。
- わざと返信を遅らせて、どれだけ心配してくれるかを見る
- 相手がいつもより素っ気ない、もしくは「どうしたの?」と戸惑う
- 「やっぱり私のこと、そこまで大事じゃないのかも」と不安が増す
相手の反応を見て安心したいのに、思った通りのリアクションが返ってこないこともあります。
そのとき、「やっぱり愛されていない」と感じてしまうと、不安は一気に強まります。
すると、さらに次のような行動が増えていきます。
- 試す頻度が増える
- 言い方や態度がきつくなる
- 相手の一挙手一投足をチェックするようになる
その結果、相手はだんだん疲れていきます。
疲れた相手は、連絡の頻度を減らしたり、距離を置いたりしやすくなります。
それを見て、こちらの不安はさらに強まり、「もっと確かめなきゃ」という気持ちが増える。
この一連の流れが、「試す→相手が疲れる→不安が増す」という悪循環です。
どこかで止めない限り、お互いが消耗してしまうループになりやすいのです。
相手から見た「試される側」のしんどさ
相手を試しているとき、頭の中は自分の不安でいっぱいになりがちです。
そのため、「試されている側がどう感じているか」まではなかなか想像できないこともあります。
試される側が抱えやすいしんどさには、次のようなものがあります。
- いつもテストされているようで、リラックスできない
- 何をしても「足りない」と言われている気がする
- 説明しても信じてもらえず、「頑張り損」のように感じる
最初のうちは、「不安にさせてしまっているのかな」と、相手も丁寧に対応しようとするかもしれません。
けれど、何度も同じパターンが繰り返されると、次第に疲れがたまっていきます。
その疲れが限界に近づくと、次のような変化が起こりやすくなります。
- 連絡頻度が目に見えて減る
- 「どうせ何をしても疑われる」と感じて、努力をやめてしまう
- 「一緒にいるとしんどい」という印象が強くなっていく
結果として、「本当は関係を守りたくて試していたはずなのに、試す行動が関係を削ってしまう」という矛盾が生まれます。
この点に気づけると、自分を責めすぎずに、別のやり方を探すきっかけにもなります。
試すたびに増えていく罪悪感と自己嫌悪

本当は「もっと素直に言えたらよかったのに」と、あとから思う瞬間もありますよね。
自分でも苦しいと分かっているのに、つい同じことを繰り返してしまうとき、自己嫌悪がどんどん大きくなってしまいます。
相手を試す行動は、その場では「不安から身を守るため」の選択かもしれません。
ですが、あとから振り返ると、次のような気持ちが押し寄せてくることが多いです。
- またやってしまった…という強い後悔
- 相手を困らせてしまったという申し訳なさ
- 「こんな自分と一緒にいても、相手は楽しくないかもしれない」という自己否定
こうした感情が重なっていくと、自分を責める材料が増えていきます。
「私はいつも人を試してしまう」「まともに愛せないのかもしれない」と、自分に厳しいラベルを貼ってしまうこともあります。
すると、不安がさらに強まり、「こんな自分を本気で好きでいてくれる人なんていない」と感じやすくなります。
その不安を確かめるために、また相手を試してしまう。
このようにして、罪悪感と自己嫌悪も悪循環の一部になっていきます。
ただ、本当に必要なのは、「試してしまう自分」を責め続けることではありません。
「なぜ私は試さずにはいられなかったのか」と、背景にある不安や経験をていねいに見ていくことです。
そこから、「次は少しだけ違う選択をしてみよう」という小さな一歩が生まれていきます。
試す代わりにできる「本音の伝え方」と距離のとり方
研究員メモ

ここからは、「試さないようにひたすら我慢する」ではなく、「出てきた不安や願いをどう言葉にするか」という視点で考えていきます。
行動を変えるカギは、感情そのものを否定しないことです。
相手を試してしまうとき。
その奥にはたいてい、「もっと大事にされたい」「不安を分かってほしい」という、本音の願いがあります。
ただ、その願いを真正面から伝えるのは、とても勇気が必要です。
怖さや恥ずかしさがあるので、遠回りな行動で確かめようとしてしまいます。
ここでは、
「試す」代わりにできる本音の伝え方と、心が楽になる距離のとり方を整理します。
完璧にできなくても大丈夫なので、「できそうなところから少しだけ」取り入れるイメージで読んでみてください。
「あなた」ではなく「私」を主語にした伝え方に切り替える
相手を試したくなる場面の多くには、相手への不満や不安があります。
そのまま口にすると、次のような言葉になりやすいです。
- 「なんで連絡くれないの?」
- 「どうして私の気持ち分かってくれないの?」
- 「私のこと大事じゃないんでしょ?」
これらは、どれも「あなた」を主語にした言い方です。
責められたように感じるため、相手は守りの姿勢になりやすくなります。
そこで意識したいのが、「あなた」ではなく「私」を主語にする伝え方です。
たとえば、次のように言い換えることができます。
- 「連絡がないと、不安になってしまう私がいるんだよね」
- 「最近少し距離を感じて、寂しいなあと感じているんだ」
- 「私にとっては、もう少し連絡を取り合えると安心できるかもしれない」
このように、「私はこう感じている」「私はこうしてもらえると安心する」と伝えることで、
相手は責められている感覚よりも、「この人は今、こういう気持ちなんだ」と受け取りやすくなります。
ポイントは次の通りです。
- 相手の性格や意図を決めつける言い方は避ける
- 「〜してくれない?」より「〜してもらえると安心する」に近づける
- 自分の感情(不安・寂しさ・悲しさ)を、短い言葉で添える
完璧な言い方でなくて構いません。
「あなたが悪い」ではなく「私はこう感じている」というスタンスに近づくだけでも、会話の空気は変わりやすくなります。

感情があふれているときに、落ち着いて“本音だけ”を選んで伝えるのは、本当にむずかしいですよね。
だからこそ、少し心が落ち着いたタイミングで「言い方の練習」をしておくと、自分を守る力にもなるのかもしれません。
感情と事実を分けて話してみる練習
相手を試したくなるとき、頭の中は事実・解釈・感情がごちゃごちゃになっていることが多いです。
たとえば、こんなふうに混ざります。
- 事実:昨日は一度も連絡が来なかった
- 解釈:「きっと私に飽きたんだ」
- 感情:不安・寂しさ・怒り
この状態のまま話そうとすると、
「どうせ飽きたんでしょ」「私のことなんてどうでもいいんだよね」
といった、解釈に基づく攻撃的な言葉になりやすくなります。
そこで、伝える前に一度、次のように整理してみる練習がおすすめです。
- まず「事実」だけを言葉にする
- 「昨日は一度も連絡がなかった」
- 「ここ1週間、連絡の頻度が減っているように感じる」
- その事実を受けて「自分がどう感じたか」を言葉にする
- 「そのことで、不安になった」
- 「少し距離を感じて、寂しかった」
- それを踏まえて「どうしてほしいのか」を付け加える
- 「忙しい日が続くようなら、事前に教えてもらえると安心する」
- 「お互いに無理のないペースを、一緒に相談できたらうれしい」
この流れにすると、
相手を責めるよりも、「一緒に状況を整理してほしい」というニュアンスが伝わりやすくなります。
最初からうまくできなくても大丈夫です。
メモに書き出してから伝える。
一度深呼吸してから、短い一言だけを伝えてみる。
そんな小さなステップからで構いません。
不安になりやすい自分を、少しだけ事前に共有しておく
相手を試してしまう場面の多くは、「突然の不安」に飲み込まれたときです。
その瞬間に冷静に話すのは、とてもハードルが高いことです。
そこで有効なのが、落ち着いているときに、自分の傾向を少しだけ共有しておくことです。
たとえば、次のような形です。
- 「実は、連絡が急に減ると不安になりやすいところがあって…」
- 「以前の恋愛で急に連絡が途切れたことがあって、それ以来ちょっと敏感になっているかもしれない」
- 「だから、忙しくて連絡できない日が続きそうなときは、ひとこと教えてもらえるとすごく助かる」
こうした話をしておくと、相手は
- 「この人は、こういう場面で不安になりやすいんだな」
- 「少し配慮しておいたほうが、お互い楽なんだな」
と理解しやすくなります。
同時に、自分自身にとっても
「私はこういうとき不安を感じやすい人なんだ」
と認めることにつながります。
これは、試す行動を減らしていくための大切な土台です。
さらに、距離のとり方についても、あらかじめ話しておけると安心です。
- お互い一人の時間を大事にしたい日
- 連絡の頻度や、既読スルーに対する考え方
- SNSの使い方、異性の友人との関わり方
こうしたテーマは、問題が起きてから話し合うと、どうしても感情的になりやすいです。
まだ大きな問題になっていないうちに、「私たちのちょうどいい距離感」を少しずつ探っていく。
その積み重ねが、「試して確かめる関係」から
「話して確かめ合える関係」への移行を、ゆっくり後押ししていきます。
「自己防衛」とうまく付き合うためのセルフケアと環境づくり

恋愛のたびに心がすり減ってしまうと、「もうこれ以上は傷つきたくない」と思う自分も、責められなくなりますよね。
ただ、その気持ちのまま自己防衛だけが強くなっていくと、今度は新しい関係を始めることも怖くなってしまいます。
恋愛で相手を試してしまう行動は、多くの場合「心を守るための反応」です。
完全になくすことを目標にすると、かえって自分を追い詰めてしまうことがあります。
ここでは、自己防衛そのものを否定するのではなく、「必要以上に暴走させないための工夫」をまとめていきます。
研究員メモ

自己防衛は、本来は心を守るための大切なしくみです。
「消す」のではなく、「どのタイミングで強く出やすいかを知り、少し手前でケアする」という発想が現実的です。

「試したくなったとき」のサインにいち早く気づく
相手を試す行動が出る前には、たいてい小さな前兆があります。
多くの場合、その前兆に気づけないまま感情が一気に高ぶり、「気づいたら試すような行動をしていた」という流れになりやすいです。
たとえば、次のような変化が「前兆」になっていることがあります。
- スマホを何度も開いて、同じ画面をくり返しチェックしてしまう
- 相手のSNSやオンライン状態が、普段より気になって仕方がない
- 心拍数が上がる感じがする。胸がそわそわ、ざわざわして落ち着かない
- 小さなことにもイライラしやすくなり、他のことが手につかない
このようなサインに気づけると、
「今、私の自己防衛スイッチが入りかけているかもしれない」
と、一歩引いて自分を見ることができるようになります。
ポイントは、行動が出る前に身体の変化や思考のパターンに注目することです。
- 「スマホチェックが増えているな」
- 「同じ不安なイメージを頭の中で何度も再生しているな」
- 「今日は普段より相手の一言に敏感になっているかも」
こうした気づきは、それ自体がブレーキになります。
「試すかどうか」の前に、「今の私はかなり不安なんだな」と認めること。
それだけでも、感情の暴走は少しおさまりやすくなります。
一人で感情を抱え込みすぎないための相談先を持つ
自己防衛が強く働くとき、心の中では次のような状態になりがちです。
- 「こんなことで不安になるなんて、おかしいのかもしれない」
- 「こんなことを話したら、面倒な人だと思われそう」
- 「結局、自分でなんとかしないといけない」
このように考えるほど、感情を一人で抱え込むことになります。
抱え込みが続くと、不安や疑いがふくらみ、自己防衛としての「試す行動」が出やすくなります。
そこで大切になるのが、恋人以外の相談先を持っておくことです。
たとえば、次のような相手や場が考えられます。
- 自分の話を否定せずに聞いてくれる友人
- 恋愛や人間関係について話せるコミュニティやオンラインサロン
- 心理カウンセラーや相談窓口など、専門的な視点をくれる人
大事なのは、「正しい意見をくれる人」だけではありません。
まずは安全に気持ちを出せる場所があることが、自己防衛を落ち着かせる土台になります。
- 「こんなことで悩んでいるのは自分だけではないのかもしれない」
- 「話してみたら、少しだけ頭の中が整理された」
こうした経験が増えるほど、「相手を試す前に、誰かに話してみよう」という選択肢が生まれます。
恋人との関係だけで、自分の感情すべてを支えようとしないこと。
それが結果的に、恋人との関係を守ることにもつながります。

恋愛のことって、つい全部“その人との関係だけ”で何とかしないとって思いがちだけど…。
ちょっと外側に、心のセーフティネットをいくつか持っておくと、だいぶ呼吸しやすくなるんだよね!
恋愛だけに心のエネルギーを集中させない生活リズム
自己防衛が暴走しやすいとき、生活全体を見てみると、心のエネルギーが恋愛に偏っていることがあります。
- 仕事や勉強が手につかないほど、恋愛のことで頭がいっぱい
- 趣味や休息の時間が減り、気づけばスマホとSNSばかり見ている
- 一日の中で「自分のための時間」がほとんどない
このような状態は、心のバランスが崩れやすい土台になります。
恋愛の小さな変化に、過剰に反応しやすくなるため、自己防衛のスイッチも入りやすくなるのです。
そこで意識したいのが、恋愛以外のエネルギーの置き場を増やすことです。
たとえば、次のような工夫があります。
- 仕事や学びの時間を、「自分の成長のための時間」として丁寧に扱う
- 趣味や好きなことに没頭する時間を、スケジュールにあらかじめ入れておく
- 何もしないで休む時間を意識して確保し、疲れをためすぎないようにする
恋愛だけが心の支えになっている状態から、
「恋愛も大事だけれど、他にも自分を支えてくれるものがある状態」に近づけていく。
そうすると、次のような変化が起きやすくなります。
- 相手の一言や返信ペースに、以前ほど振り回されなくなる
- 「今は自分の時間も大事にしよう」と考えられる余裕が少し増える
- 自己防衛のスイッチが入っても、「いったん落ち着こう」とブレーキをかけやすくなる
自己防衛は、心を守るために身についた大切な機能です。
その一方で、恋愛以外の軸や支えが増えるほど、「全てを守らなくては」という緊張はほどけていきます。
恋愛だけに自分の価値を預けず、生活全体のバランスを整えていくこと。
それが、相手を試さないための土台づくりにもつながっていきます。
まとめ|「試す恋愛」から「対話する恋愛」へ視点をシフトする
研究員メモ

ここまで見てきたのは、「試してしまう自分を責める材料」ではなく、これからどんな関わり方を選び直していくかを考えるためのヒントです。
試す行動の裏には、必ず「自分なりに傷つかないように守ろうとした心」があります。
その存在も尊重しながら、一歩ずつ対話の方向へ視点をずらしていきましょう。
相手を試してしまうときに思い出したい3つのポイント
相手を試すような行動をしてしまった自分に気づいたとき、まず思い出しておきたいのは次の3つです。
- それは“悪い性格”ではなく自己防衛のあらわれ
「私って性格がねじれているのかな」と落ち込む前に、
「それだけ傷つきたくない自分がいるんだな」と捉え直してみることが大切です。
心は、自分を守るために先回りして安全を確かめようとすることがあります。 - 背景には不安や、大切にしたいものが必ずある
試す行動の奥には、たとえば次のような思いが隠れていることが多いです。- 相手にちゃんと大事にされているか確かめたい気持ち
- もう二度と、同じような別れ方・裏切られ方をしたくない怖さ
- 自分に自信が持てず、「本当に好きでいてもらえるのか」不安になる感覚
行動だけを見ると「めんどうな人」に見えてしまいますが、根っこにあるのは“大切にしたい関係”への願いです。
- やり直しはいつでもできる
一度試してしまったからといって、関係が必ず壊れるわけではありません。- 「あのとき、ああいう言い方しかできなかったな」
- 「本当は不安って正直に言いたかったな」
そう気づけた時点で、すでに一歩前に進んでいます。
次の1回のコミュニケーションを変えることから、ゆっくりと流れは変えていけます。
完璧に「試さない人」を目指すより、小さな選び直しを重ねる
「もう二度と相手を試さない」
このような目標は、とても立派ですが、その分だけ自分を追い詰めやすくもなります。
大切なのは、完璧な“試さない人”になることではなく、少しずつ選び直していくことです。
- 試したくなった瞬間に、まずは深呼吸を一つ入れてみる
- 「今、私は不安なんだな」と言葉にしてから行動を選んでみる
- いつもなら既読スルーで様子を見るところを、「正直に不安を伝えてみる」を一度試してみる
このような小さな選び直しを重ねていくと、
- 「試すしかない」と思い込んでいた場面でも、
- 「今日は別のやり方をしてみよう」と考えられる余地
が、ほんの少しずつ増えていきます。
失敗しても構いません。
うまく伝えられない日があっても、また次の機会に別の選び方を練習できると考えてみることが大切です。
- 「試してしまった自分」を責めるのではなく、
- 「試さずに済ませられた部分」や「不安に気づけたこと」も、ちゃんと自分の成長としてカウントしてあげること。
その積み重ねが、「試す恋愛」から「対話する恋愛」へのシフトを、静かに後押ししてくれます。
ことのは所長のラボノート

恋愛の中で生まれる「試す行動」は決して奇妙なものでも、特別にゆがんだものでもないんじゃよ。
それは、これまでの経験の中で心が学んできた生き残り方の一つにすぎんのじゃ。
じゃが、昔は自分を守ってくれたそのやり方が、今の自分を苦しめていると感じるなら、
そこから先は、少しずつ別の方法を選び直してもよい時期に来ておるのかもしれん。
相手を試す代わりに、「不安なんだ」と言葉にしてみること。
沈黙のまま距離を測る代わりに、「どうしていきたいか」を一緒に考えてみること。
恋愛を変えるとは、相手を変えることでも、自分を別人に作り替えることでもない。
心がこれまで身につけてきた防衛策に敬意を払いながら、対話という新しい手段を少しずつ増やしていくこと──それこそが、これからのやさしい恋愛の実験なのじゃよ。


